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【報告レポート】六本木アートナイト2024<関連企画>インクルーシブ・アート・プログラム

毎年開催される六本木アートナイトの1プログラム「インクルーシブ・アート・プログラム」は、 さまざまな人たちが物理的・心理的バリアを感じずに参加でき、ともに活動することで、新しい気づきを得る対話鑑賞として開催してきました。 エイブル・アート・ジャパンは2019年から企画協力をしており、今年で6回目となります。 2024年は、「”見る・聞く・感じる”いろんな方法で都市とアートとミライのお祭りを体験しよう!」と題し、リアル鑑賞ツアーとオンライン鑑賞会を実施しました。 それぞれの様子を報告します。

プログラム1

鑑賞ツアー「ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー」

鑑賞ツアーでは、感覚特性のあるファシリテーターと一緒に、六本木ヒルズに設置された作品を鑑賞しながら会場内を巡りました。当日は、障害や特性の有無に関わらず20代〜50代の約10名の方にご参加いただきました。
ファシリテーターは、去年のオンライン鑑賞会でも担当してくれたユズコさんと、今回はじめてのまーしーさんです。おふたりは、アートが好きで、普段から作品鑑賞をされているそうです。
今回のテーマは、「作品の空気感や匂い、音、光など一人ひとりの感じ方や気になるものをシェアしながら鑑賞する」ことでした。実は、このテーマは、ユズコさんから「感覚特性があることをネガティブなものとして捉えるのではなく、違いを楽しめるような鑑賞ツアーがあったら様々な人が楽しめる企画になるのでは?」という言葉から生まれたものです。
今回の鑑賞ツアーで大切にしたいこと、どのようにしたら参加者が安心して鑑賞ができるかを何度もおふたりと話しながら企画を作っていきました。参加者には、事前に鑑賞ツアーの具体的なスケジュール、鑑賞作品名、どのようなルートで回るかが分かる情報を明記したマップのデータの共有、大きな音や光る作品について情報をお伝えした上で、当日ご参加いただきました。運営スタッフは、リラックスしたり、集中力を高めるフィジェットトイや、使い捨ての耳栓、アイマスクを準備し、ツアー中にいつでもお渡しできるようにスタンバイしていました。

【報告レポート】六本木アートナイト2024<関連企画>インクルーシブ・アート・プログラム

はじめに、ファシリテーターと参加者で自己紹介をしました。名前の他に、今回のテーマに合わせて、リラックスできる感覚について発表しました。みんなのリラックスできることをシェアしたことで、少し緊張感がほぐれたようでした。
取り上げた作品は2点。参加者は2つのグループに分かれて作品を鑑賞しました。まずは、作品の前で、数分間ひとりでじっくり作品を鑑賞。その後、ファシリテーターと参加者でどんな風に見えたか、どう感じたかなどの感想をシェアします。1つ目の作品を鑑賞した後は、20分間の休憩時間を挟み、2つ目の作品を鑑賞しました。休憩時間に、参加者の中には、みんなの輪から離れて少しリフレッシュしたり、参加者同士やファシリテーター、スタッフと話をするなど、ご自身のペースで楽しまれている様子が見られました。
振り返りの時間には、まず3分間ひとりで感想を考える時間を作り、その後、全員で感想をシェアします。参加者からは「童心に戻れた!」「感覚を共有するのは面白い企画だと感じた」「自分ひとりでは、見逃してしまうことも、他の人と一緒に見ることで新たな発見があった」など様々な感想がありました。

【報告レポート】六本木アートナイト2024<関連企画>インクルーシブ・アート・プログラム

後日、ファシリテーターのおふたりからも感想をいただきました。
ユズコさん「(六本木アートナイトのインクルーシブ・アート・プログラムで)前例がない「感覚特性」向けのリアル鑑賞ツアーが実現できたことは、とても意義深い企画だったと思います。」
まーしーさん「様々な事情を抱えている人たちが、自分でイベントに応募し、その場所にやってきて参加するということは、とても勇気がいることなのではと思います。そうして参加していた人たち皆さんがとても輝かしく、パワーをもらいました。」
今回の鑑賞ツアーでは、六本木アートナイトの盛り上がりを直に感じながら、作品を通して自分の感覚について話したり、他の人との感覚の違いを感じたりとあっという間の2時間でした。

プログラム2

オンライン鑑賞会「じっくり、まったり語らナイト」

オンライン鑑賞会では、見え方だけでなく、住む場所や暮らし方の異なる約10名の参加者がオンライン上に集まり、リラックスした雰囲気の中でおしゃべりを交えながら作品を鑑賞しました。

【報告レポート】六本木アートナイト2024<関連企画>インクルーシブ・アート・プログラム

ファシリテーターは、過去にも登場した井戸本将義さんと、今回はじめて務めた佐々木奈央さん。おふたりとも視覚障害のあるひとです。同じ学校の先輩後輩という間柄であり、鑑賞会はお二人の軽妙で心地よいやりとりのなか、和やかに進行しました。
取り上げた作品は3点。ジャンルや素材、サイズが異なる作品を、複数の写真や動画を通じて味わいました。参加者の発言を通じて、ひとつの作品の印象が多様に変わり、イメージが広がっていく様子は、対話型鑑賞ならではの面白さといえるでしょう。
多くの参加者にとって、今回のような対話による鑑賞は初めてでした。そのため、振り返りの時間には「見えているものを言語化するのが難しかった」という声があった一方で、「それを超えて楽しむことができた」という感想も寄せられました。その他にも、「複数人でひとつの作品を語り合う機会はあまりなく、面白かったし勉強になった」「素直に感じたことを話すことで、思いや感情が伝わることを実感し、大きな収穫だった」「言語化する難しさを感じる一方で、言葉を選ぶ面白さもあった。黙って鑑賞する楽しさもあれば、あれこれ話しながら見る楽しさもあると感じた」といった意見がありました。
ファシリテーターからも、「以前は、具体的な説明がないと作品を楽しめないと思っていましたが、今回のような鑑賞でも十分に楽しめることを実感し、非常に充実した2時間を過ごせました」(佐々木)、「アートナイトの会場の雰囲気がとても好きです。リアルでは作品の迫力を感じられる一方で、オンラインではその魅力が伝わるか心配でしたが、『実際に会場に行きたくなった』という感想をいただき、とても嬉しかったです」(井戸本)というコメントがありました。また、「視覚障害や聴覚障害にとらわれることなく、自分たちが見えているものを言語化し、共有すること自体が楽しい。誰かのために説明するのではなく、自分たちの感じたことを共有することで十分に面白い」というメッセージもありました。
今回のイベントは、タイトル通り「じっくり、まったり」と語り合いながら、実際の会場へ足を運びたくなるような充実した時間となりました。
インクルーシブ・アート・プログラムは毎年さまざまなテーマや方法で開催しています。そこに参加する人の年齢も性別も趣味も参加目的もさまざまで、ここでしか出会えない、一期一会の場となっています。