97年度、社会福祉・医療事業団の助成を受け、財団法人たんぽぽの家、株式会社三和総合研究所と共同で、「美術館など文化施設のバリアフリー化に関する調査研究」を実施しました。この調査では、美術館をはじめとする文化施設の、真の意味でのバリアフリー化を目指し、特に「ソフト面」のバリアフリーについてさまざまな考察を行いました。その一環として、全国9館の美術館へ調査グループが出向き、ソフト・ハード両面のバリアについて踏査調査を行うと同時に、美術館スタッフを含めた意見交換を行いました。この調査グループは、障害のある人(視覚、聴覚、身体、知的な障害のある人)や建築家、学芸員、美術家、会社員や主婦などさまざまな立場の67名の市民が参加し、美術館の方針や施設の問題点を単に批判するのではなく、いかにアクセシブル(親しみやすい、身近な)な存在にできるかを検討、提案することを目的に組織されたものです。今回の調査で、さまざまな示唆を含んだ指摘が得られました。
私たちがめざすアクセシブル・ミュージアムとは、どのような美術館なのか、そのためには障害のある人、ボランティア、美術館は何をすべきか。またどのような関係をつくってゆけばよいのでしょうか。私たちは「アクセシブル・ミュージアム」のイメージを、
・市民とのパートナーシップのある美術館
・クオリティ・オブ・ライフを与える美術館
・人間の五感すべてにうったえる美術館
・館の情報に利用者が自由にアクセスできる美術館
・自由に移動でき安心して楽しむことができる美術館 と考えています。
調査とフォーラムを通して、真のバリアフリーのためには、単に美術館や役所に期待するだけではなく複合的な問題の解決が必要であることを実感しました。市民サイドでバリアを壊していくネットワークをつくりさまざまな問題の解決や提案をしていく必要性を感じました。調査を発展的に継続して行くことにより、すべてに開かれた(アクセシブルな)美術館や文化施設、街づくりをめざします。
企画・組織作り、情報提供など、皆さんにもぜひご協力をいただきたいと思っています。 この調査研究をうけて、美術や美術館をもっと身近に、もっと楽しむための自主的なグループ『ミュージアム・アクセス・グループ「MAR」』を、昨年立ち上げました。美術館や展覧会の情報の収集や発信、アクセス調査、ネットワーク作りなどをめざし、月に1回の視覚障害者との鑑賞ツアーも行いながら、新しい鑑賞の仕方や楽しみ方の発見や提案などを主な活動としています。