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エイブル・アート・アワード 2008年度支援先

10年目を向かえた2008年度のエイブル・アート・アワードには、全国から制作支援の部に30件、展覧会支援の部に33件、合計63件の応募がありました。
制作支援の部は支援先5件に、協賛企業であるマツダ油絵具株式会社よりアクリル絵の具(現物)が寄贈される「マツダ油絵具賞」の2件となりました。アクリル絵の具を有効にお使いいただき、活動の幅が拡がっていくことを期待しています。また、「制作支援の部」では多くの現場で、表現活動と仕事の創出(=収入の確保)の距離がとても近くなっているという現実です。仕事につなげることはとても大事なことではありますが、エイブル・アート・アワードは、あくまでも一人ひとりの存在が大切にされるための表現活動に対するご支援です。この原点を見つめ直し、ここ10年来広がってきた障害のある人たちの表現活動の環境が交代することのないよう、発信をし続けていきたいと思います。
展覧会支援については、選考が苦戦しましたが「東美名子」さんに決定しました。東美名子さんの展覧会を通して表現の原点について考える機会をつくって行きたいと考えております。12月22日から27日まで銀座のガレリア・グラフィカbisで行われる展覧会に是非足を運んでいただけたらと思います。 今後もより充実した支援をめざし、このプログラムを続けていきたいと思っています。そのためには新たな支援者、支援企業が必要です。皆さまからのご支援や支援に関するアイデア、情報提供もお待ちしています。

■ 制作支援の部 (応募件数=30件 支援件数=5件+2件)
・NPO法人 にんじんの家『にんじんの家 絵の会』(東京都八王子市)
・[ウバウバ]UNIT(北海道札幌市)
・社会福祉法人 ライフサポート協会『障害者余暇自立支援実行委員会』(大阪府大阪市)
・社会福祉法人 かしの木『かしの木  創作部門』(広島県呉市)
・NPO法人 逢い『障害者地域活動支援センター』(秋田県由利本荘市)

*制作支援の支援先には10月に10万円が振り込まれ、画材の購入に充てていただきます。直接制作に関わることであれば使途は自由。 この資金をきっかけにさらに自由で豊かな表現活動が行われることを期待しています。

■ マツダ油絵具賞 (提供:マツダ油絵具株式会社)

制作支援の部の選考にあたって、最終選考まで残りながら支援対象とならなかったグループで、アクリル絵の具での表現が有効と思われた2つのグループに対して協賛企業であるマツダ油絵具(株)よりアクリル絵の具(現品)が贈られるものです。アクリル絵の具を有効にお使いいただき、活動の幅が拡がっていくことを期待しています。

・社会福祉法人 宝塚さざんか福祉会 知的障害者入所更生施設 いきいき宝夢『いきいきあーと 絵画クラブ』(兵庫県宝塚市)
・NPO法人 ぱんぷきん『ぱんぷきん工房』(東京都武蔵村山市)
■ 展覧会支援の部 (応募件数=33件 支援件数=1件)
東 美名子さん
東 美名子さん(東京都練馬区)
>展覧会の詳細はこちら
■ 選考者/立ち合い人
高橋 直裕(世田谷美術館学芸員)
サイモン 順子(アートカウンセラー)
中津川 浩章(美術家)
滝川 潔(富士ゼロックス端数倶楽部)
及川 則子 (富士ゼロックス端数倶楽部)
松田 貴子(花王株式会社、花王ハートポケット倶楽部)
山下 剛史(花王ハートポケット倶楽部)
AYURA(ジャズ・ヴォーカル、世田谷美術館さくら祭実行委員会)
■ 選考評
サイモン 順子(アートカウンセラー)
今回は30件という数もさることながら、11年前にエイブル・アート・アワードが発足した時の選考規準を見直しをせまられているのではないかと思われる応募が多く、選考は難航しました。社会状況からやむをえないことかもしれませんが、やはり「アート」の原点を見据えて行きたいと思いました。
その意味で、八王子市の「にんじんの家、絵の会」、大阪市の「ライフサポート協会」は個々を第一に考えた活動、内容がすばらしいです。「にんじんの家、絵の会」の鳥潟さんは、30年も続けられている活動家で、「一番大切に思っていることは、各々が自分の世界に入り込んで思いのたけを発散させ、すっきりした気分で、家に帰ってもらうことです」と記されたのに感動しました。
又今回は、アート活動に力を入れ、地域内外でも大きな活動をされていたグループからの応募があったことが驚きであると同時に、やはり上に記した情勢の変化が、活動を続けて行く上で、大なり小なりむずかしくなって来ているのではという危機感を感じずにはいられませんでした。

出来た作品を展示したり、販売することは少しも否定しているのではありませんが、販売するための作品を製作する。それを制作活動とするのはいかがなものでしょうか。
高橋 直裕(世田谷美術館学芸員)
昨年の講評で『今年ほど選考に悶絶させられたことはありませんでした。まさに嬉しい悲鳴といったところでしょうか。来年もこの興奮を味わえることを祈っています。』と結びの言葉を綴ったのですが、まさかそれが本当になるとは思ってもいませんでした。
昨年、最後の最後までアワード候補作家として選考者を悩ませた澤井玲衣子さんと東美名子さんのお二人が今年も最終選考まで残り、昨年同様長時間に及ぶ議論が行われました。どちらも作品のレベルは非常に高く、なお且つ非凡な才能の持ち主です。できればお二人ともに展覧会を開催して欲しい、というのが正直な気持ちでした。しかし、アワードの枠は1名。結局議論の末、東美名子さんに決まりました。
理由としては、東さんの今年制作された作品群が昨年よりも格段に良くなり完成度が上がっていること。年齢が若くこれからの成長が期待でき、今回のアワードをきっかけとして更にその才能を飛躍させてもらえるのではないか、という期待によるものでした。従って、東さんの作品が澤井さんの作品より勝っているという評価で選考が行われた訳では決してないのです。またそうした評価も今回は不要でした。
ダイナミックさと繊細さを併せ持った筆致と絶妙な構成力が魅力の澤井作品に対して、作者の中に内在する深い精神世界に観る者を引き込んでしまう、吸引力の強さが東作品の魅力です。このように、全く異なった魅力を持つ作品を比較対照すること自体無理であり、また意味のない行為なのです。今回の選考会ではそれを敢えて行わなくてはならないところに最大の苦渋苦難があったことにご理解をいただきたいと思います。
また、澤井さん、東さんと並んで選考者一同の注目を浴びたのが、これも昨年同様に松尾由佳さんの作品でした。前回よりも更に水彩画の技術が向上し、清楚で極めて美しい画面になっています。勿論完成度も高く、透明感のある色彩のハーモニーが気品溢れる作品にしており、文句のつけどころがありません。ただ、前者二人の個性があまりにも強烈なため、おとなしく控えめに見えてしまったところが不運だったといえます。
加えて、グループと個人と二通りのプレゼンテーションをしていただいた川口太陽の家・工房集の皆さんの意欲も高く評価したいと思います。惜しむらくは、作家の数が多かったため、個々の作家の印象そのものが希薄に感じられてしまったことです。次回は作家を絞り込んだうえで、是非再挑戦していただきたいと思います。
エイブル・アート・アワード「展覧会支援の部」は毎年1名もしくは1グループといった制約がありますが、昨年、今年のように年々応募作品のレベルが向上してきますと、涙を呑んで見送らなくてはならない作家が増えてきます。支援の数を増やすことが最善の解決策であることは明確ですが、それにはどうしても資金が必要となってきます。従って暫くの間はいわば「順番待ち」の状態が続くかもしれません。そうした状況をご理解いただき、今年応募された方々にはどうか来年もご応募いただきますよう御願いをいたします。
中津川 浩章(美術家)
「制作支援の部」
今回も興味深いグループがたくさんありました。そんな中で、すでに様々な展開し継続をしている制作活動の草分け的なグループがいくつか応募してきていて、そんなところからも、現実・現場は厳しい状況にあるのだなあと、あらためて感じました。

支援は、現実の中で、さらに制作費のサポートがなかったらグループの展開どころか、継続もできないかもしれないグループ。画材があればもっと表現の可能性が広がっていき、魅力的な表現につながっていくことを感じさせるグループに決まった様に思えます。 そこであらためて感じる大切なことは、作品の評価、売買ではなく、ものをつくること、表現することの原点です。ひとりの人間が表現に向きあうということの切実さ、そしてその世界の深まりが様々な物事を展開していく、大きな要因になっているということです。順序が逆転してしまうとその大切な原点を見失いがちになる危険性がある様な気がします。
  厳しい現実があることはよく理解できますが、だからこそ粘り強くひとりひとりの孤独な魂と向きあって、ささやかな声に耳を傾け、新たな表現の可能性をさぐって欲しいと感じました。

「展覧会支援の部」
前回も悩みましたが、今回はさらに迷い悩みました。紆余曲折があり、最終的に澤井玲衣子さん、東美名子さんの二人に絞られましたが、ここからが大変でした。傾向の異なる優れた作品に優劣をつけることはできません。しかしどちらかを選ばなければならないわけです。 結果的には東美名子さんに決定しました。そこで決め手となったのは、すでに出来上がっている障害者アートのイメージから離れつつある作品であったということです。どういったことかというと、いわゆる障害者アートにみられる記号の反復やスクリブル(なぐりがき)的な特徴から離れ、そこにあるのはただ圧倒的な絵画だったということです。
清らかでいながらで、強く激しい感情が幾重にも重なりあい層となって成立している、よい意味で方法論が見えてこない作品でした。それは毎回素手で世界を掴み取ろうとする行為の反映であり、絵を描くことに慣れず、いつも自分自身の存在に対する怖れと戦っている行為のプロセスが、絵として現れてきた感覚です。その感覚がしっかりと手渡されるとき、東美名子さんの障害を持つことの意味も一緒に手渡される気がしました。障害をもつ、もたないに関わらず、それは人間であるならば実は内側に誰でもが持っている感覚です。彼女に障害があるからこそ、それがはっきりとしたかたちで表現され、目に見える絵画として存在しているのです。描くことが希望とつながっている開かれた絵画を、多くの人に見てほしいと感じました。
滝川 潔(富士ゼロックス株式会社 CSR部/端数倶楽部事務局長)
「制作支援の部」
・にんじんの家絵の会
活動目的(自分の世界に入り込んで思いのたけを発散する)がはっきりしており、画材の提供が急務。
・ウバウバUNIT
「ありのままの自己表現」という活動目的と支援金の使用目的がはっきりとしている。
・障害者余暇自立支援実行委員会
知的障害者、精神障害者、健常者などが一緒になって参加者同士が互いに刺激しあうようなコーディネイトをしている。余暇の活用ではなく才能や可能性を引き出すことを目的としていることがはっきりとしている。
・かしの木創作部門
支援金の使途案が具体的でわかりやすい。
・障害者地域活動支援センター
地域で生活する知的障害者の表現活動を支援している。地域とともに創作をして相互理解支援につなげていることを評価。

「展覧会支援の部」
今回の選考会もたいへん悩み、また楽しませていただきました。

澤井玲衣子さん:昨年衝撃を受けた、ピアニスト、テノールなど一連のモノクロ作品は1年経った今も強烈な印象です。ただ、最近の作品を見ると大胆さや力強さがやや後退し、執拗なドットやパターンの繰り返しといった、内省的な作風に変化していることに意外性を感じ、興味を覚えました。彼女の中に大きな変化が起きつつあるのでしょうか。
東美名子さん:昨年のたくさんの作品は、それぞれに何かを主張しつつも、天真爛漫さというか、無邪気さを感じましたが、今年選考のテーブルに上がった作品は、一見して「すごい」というそんな単純な言葉では言い表せないですが、その場では他に言葉が見つかりませんでした。
とくに「赤い月」は強烈な印象でした。他のしずく、灯り、りゅう、赤い鳥、いずれも昨年の作品から、長足に進歩しています。人は1年でこんなにも絵が変わるものなのでしょうか。表現の技術もさることながら、その絵に彼女のすごい集中力を感じました。
応募作品はいずれも第一級の美術作品だと思います。この作家が障害を抱えているとはにわかに信じられません。多くの方に見てほしいと思いました。
松尾由佳さん:昨年とても気にかかっていましたが、今年の応募作品を見て、一見してうまくなったと感じました。もちろんその画風は依然とても個性的で、風景画として心地よさだけでない何かを感じさせます。松尾さんの中で風景の形、色がどのように分解され、再構成されているのか、と考えさせられました。うまくなったその分、昨年細部に感じた霊気のような印象は薄らぎましたが、それでも何かが違います。日の出を描いた作品はとくに色彩が印象的でした。
奇しくも昨年最終選考に残った方と同じ顔ぶれでしたが、それぞれ作品に際立った変化がありました。
皆さんそれぞれに成長されているようで、とても嬉しく思いましたし、今後の創作活動にますます期待したいと思います。
松田 貴子(花王株式会社/花王ハートポケット倶楽部)
今年度もハートポケット倶楽部と花王(株)からエイブル・アート・アワードへご支援させていただくことができ、また選考会にも参加させていただき大変嬉しくおもいます。
制作支援の部は申請書類からのみの選考で、書類からは熱心に活動を行う気持ちが伝わってきましたが、純粋に芸術に取り組むことだけに向き合うことが難しい現実の厳しさも感じました。
展覧会支援の部は写真での選考でしたが、それぞれに個性があり豊かな芸術性を感じました。また年代ごとに変化する表現も鑑賞として楽しいものでした。どのような展覧会になるのか、今から楽しみです。
AYURA(ジャズ・ヴォーカル/世田谷美術館さくら祭実行委員会)
作品にはそれを制作した人の人生が映る。
何かを体験し、何かを考え、そしてそこから生まれてきた作品たち。
今回、展覧会支援の部で最終選考まで残られたお二人の女性は昨年も最終選考まで残り、惜しくも受賞を逃した方たちだ。
この一年間、何を体験してこられたのだろう?
悔しい思いをバネにして絵筆を握ってきたのだろうと思うがただ悔しいだけでは作品に深みは出ないわけで、悔しさとはまた別の何かがその人の中にあふれてこなければ人の心を打つ作品にはならない。
大賞を受賞された東美奈子さんの作品にはその何かが溢れていたように私には思える。
作品の中に宿る普遍的な何かが多くの人を感動に導く。
それを私たちは芸術(アート)と呼び、そういう作品を制作する人たちをアーティストと呼ぶわけで上手下手を超えたところにそれは存在する。 「上手いね」と他人に感心される人が感動も与えることができるかというとそういうわけではない。
それは音楽の世界でも同じである。
毎年砧公園のさくらが咲き 世田谷美術館のさくら祭での野外ライブが近づくと「今年はどんなアーティストが誕生してくるのだろう?」と期待で胸が膨らみそして、私も感動が与えられるステージを創ろうと心密かに決意する。
関わらせていただいているおかげで、モチベーションの高いステージができます。
この場を借りてお礼申し上げます。

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